東京都美術館で開催している、版画家・吉田博の展示会に行ってきました。
いやぁ本当に素晴らしかった!!!
吉田博の魅力
緻密な絵作り
今回鑑賞した吉田博の版画ですが、やはり版画らしさがあってとっても満足できました。
会場に入ると、まず最初に向き合うことになる作品『朝霧』。展示1枚目になりますが、最後まで見た中でもナンバーワンでした。
瞬間の美と、安定した構図。何時間でも見ていたい作品です。
画像は紫色が強く出てますが、実際はもっと白かったと思います。
左下から画面中央へとつながる葉っぱの流れ。2人の人物が静かな暮らしを物語っています。視線は上に移っていき、最後は木々の間からきれいに抜けていく……。
優れた絵画は、その1枚のなかで視線がぐるぐる回る仕掛けが施されています。秋田麻早子著『絵を見る技術』でもそのように紹介されていました。
長時間見ていられるというのは、画家にとっては一番うれしいことでしょうね。趣味で写真をやっている僕にもそれはよくわかります。
吉田博の版画はその他多く版画と比べて、摺る回数も使う色も多いのが特徴です。
たとえば、同時期を生きた版画家、川瀬巴水の作品を見てみます。同じ版画といえど、その違いが絵に表れていますね。


(右)『三津浜の朝』(1953)
雰囲気がぜんぜん違います。
版画のイメージに近いのは、むしろ川瀬巴水のほうかもしれません。
紙に直接描いていくよりも、ひと手間かかるのが版画です。それゆえに、吉田博の緻密な絵作りがひときわ目立ちます。
同じ絵が複数ある!
展示1枚目ですでに魅了されてしまいましたが、その後も最後までたのしむことができました。
同じ版木を使って、昼と夜、春夏秋冬といったふうに、複数バージョンが絵があったのは面白かったです。
版画ならではのやり方ですね!


摺り色を変えることで、時間帯や季節までも細かく表現しているのがわかります。
その他、薄く摺ったり濃く摺ったりと、さまざまな工夫が凝らしてありました。
展示自体のボリュームも満点です。
色をあえて塗らずに刷って凹凸を際立たせる”空摺り”だったり。故ダイアナ元英国皇太子妃が執務室に飾っていた版画には、たくさんの人が並んでいました。
実際に使われた版木も展示されているのを見れば、みんな思わずうなるでしょう。
彫りの緻密さが、想像のはるか上でした。
とにかく構図が美しい
先にも書きましたが、僕は趣味で写真を撮っています。そうした観点でいうと、構図が本当に美しかった。もちろん版画は絵ですから、風景にないものまで描くことができます。
けれども逆に、「自分なら撮るとき邪魔だと思うのにな」という位置に木の枝がある、といったことが何枚か見ていて思いました。
構図については、写真より絵画のほうが自由度があります。だからこそ、枝の例で言ったら「あったほうが美しいから描いた」はず。
そう考えて改めて見てみると、なるほどそうなのかもしれない、なんて学ばされました。
吉田博の作品については、公式サイトの見どころにいくつかあります。ぜひ見てみてくださいね!!
さいごに
ここまで随分と書いてしましました。^^;
美術展は会期が決まっています。ブログで紹介しても会期が終わったらムダになるかな、とも思ったのですが……自分が感じたことは残しておこう、という気になりました。
好きなことについてはたくさん書けますね。まだ言いたいことがたくさんあることに驚いています。
長すぎても良くないのでこのへんで。次回は別の展覧会の話をしようと思っています。
ではまた。
【参考】
・秋田麻早子著『絵を見る技術』